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眼鏡と鞄について Part 2

更新日:6月21日

次に鞄です。眼鏡のように一極集中ではないですが、鞄といえば豊岡をあげないわけにはいきません。豊岡市は兵庫県にあり、同市にある城崎温泉の方が有名かも知れません。豊岡の鞄は奈良時代以前から作られていたと言われ、その素材と製法は柳細工だったようです。それが戦前からファイバー素材に転換され、ベルリンオリンピックの日本選手団の公式鞄として採用されたのは有名な話です。私も昔関わったのはファイバー素材の方でした。資源が少ない日本でも、豊富だった木材を原料として鞄を作るなんて、まさに必要は発明の母ですよね。それにしても豊岡も鯖江も一般には雪国と認識されている地理ではないですが、実際は雪深い所です。工芸品は厳しい気候に育まれるのかも知れません。


豊岡のファイバー鞄と比較されるモノに、英国のグローブトロッターがあります。一時はリモワと並んで空港のターンテーブルを我が物顔で回っていました。リモワは今も相変わらずですが、グローブトロッターはめっきり見なくなりましたね。理由は分かる気がします。ファイバー素材って、要は紙なんだけど、沢山貼り合わせる事によって強度が増すんです。表面は撥水加工で水分や汚れにも強い。豊岡のは無骨だけど品質はグローブトロッターの比じゃないです。本当に強い。20年くらい前から有名セレクトショップでも見るようになりました。鞄だけでなく、日本製が見直されてきた時期です。キャスターなんて台車用が取り付けられてて本当にタフです。湿気でふやけたりしないし、独特の加工を表面に施してファイバーそのものの強度も凄かった。こういう年月を積み重ねて品質を磨き上げていけるのが、日本の技術なんですよね。

眼鏡も全く同じ。数年で満足いくものが作れるわけもない。人間も会社も同じですね。シャネルやエルメスやヴィトンもそうだけど、ブランディングは小手先の手法じゃなく、歴史そのものなんですよね。もっとも歴史を積めば必ずブランドとして成功するわけではないですが。


豊岡と鯖江に共通してるのは、特定のメーカーがブランドとして存在してるのではなく、産地としたブランディングに成功してる事ですよね。これはやっぱり強いですよ。特定の企業ではなく、鯖江の眼鏡、豊岡の鞄。地場産業は一帯観光地にもなります。陶磁器や農作物とかも産地のブランディングに成功した事例は沢山ありますよね。そういうモノって、いずれは世界でも評価され、輸出されていきます。


ただ問題もあります。日本の地場産業はそれに従事する絶対的人口が少ないから大量生産出来ない。沖縄の輸出品はまさにこれが問題になっています。地場産業が生み出すあらゆるモノは、アジアの巨大マーケットに見合うだけの物量を生み出せない。中国やASEANの購買意欲は旺盛なのに、その需要を満たす供給が桁違いに少ないから商売にならないと言われています。相当な機会損失をしていますね。やはり県産品の輸出はその生産過程を含めて生産者任せにしていては、地場産業の場合はなかなか成長しません。政治や行政も相当の覚悟を持ってサポートしないと。例えば県や市長区村が生産者からまとめて買い上げるから生産量を上げさせ、それを行政がまとめて輸出して外貨を獲得するとか。官民連携したサプライチェーンを構築しないと、とてもじゃないけど巨大マーケットから相手にされない。沖縄県も様々なバックアップ措置を施してはいるけど、補助金だけではない、さらに踏み込んだ支援が必要だと思っています。戦争で何もかも破壊されてしまった沖縄の地場産業はまだ創成期の段階。これから歴史と実績を積み上げ世界に認知されるサプライチェーンを作っていけばいい。まだまだのびしろだらけです。

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