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RCEPと沖縄(食品編)

地域的な包括的経済連携(RCEP)協定は、2012年11月に交渉を開始して依頼、8年の時を経て2020年11月15日に署名された。

その後、昨年11月2日に協定の発効要件が満たされ、寄託を終えた日本、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、ラオス、ニュージーランド、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国について、ようやく本年1月1日に発効された、出来たてのホヤホヤのEPAだ。

韓国も2021年12月3日に寄託を終え、2022年2月1日に発効することが決まっている。


3年前にはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が発効されているが、参加国が11か国のTPPに比べ、RCEPは最終的に15か国で構成され、今回の参加を見送ったインドとも参加交渉を続けて行くはずだ。TPP参加国の総人口が5億人なのに対し、RCEPは23億人と5倍近い。TPPを遥かに凌ぐ世界最大の自由貿易圏となるのだ。しかしインドが抜けたことにより中国の地位がさらに強化され、中国による貿易ルール形成主導が起きる可能性も懸念されている。そのため日本はASEANの覇者となりつつある中国を縛り監視するためにも、協定に参加する意味は大きいし、中国と知的財産や電子商取引の分野で共通のルールを持つ意味は大きいともいわれている。これについては別の機会に詳しく述べるつもりである。


ところで99.9%の関税撤廃率のTPPに対してRCEPは91.5%ということは、効果的な適用のためには対象品目を把握しておくことが大切だ。TPPと重なる参加国も多いが、概ねRCEPよりもTPPの方が(日本にとって)有利な関税率に設定されている。とは言っても、日本にとって初めてとなる最大の貿易相手国である中国や、3番目の韓国と初めて経済連携協定を結ぶ意味は大変大きいと思う。




中国からの主な獲得内容(日本からの輸出)  ①品目/②現行関税/③合意内容

①パックご飯等/②10%/③関税撤廃(21年目)

①米菓/②10%/③関税撤廃(21年目)

①ほたて貝(養殖用 (無税)除く)/②10%/③関税撤廃(11年目又は 21年目)

①さけ/②5%、7%又は10%/③関税撤廃(11年目又は 21年目)

①ぶり/②7%/③関税撤廃(11年目又は 16年目)

①切り花/②10%又は23%/③関税撤廃(11年目又は 21年目)

①ソース混合調味料/②12%/③関税撤廃(21年目)

①清酒/②40%/③関税撤廃(21年目)


韓国からの主な獲得内容(日本からの輸出)  ①品目/②現行関税/③合意内容

①菓子(キャンディー、板チョコレート)/②8%/③関税撤廃(即時又は10年目)

①清酒/②15%/③関税撤廃(15年目)


インドネシアからの主な獲得内容(日本からの輸出) ①品目/②現行関税/③合意内容

①牛肉/②5%/③関税撤廃(即時又は15年目)

①醤油/②5%/③関税撤廃(10年目)



では輸入関税についてはどうなっているのだろう。

  • 重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)については関税削減・撤廃から全て除外されている。

  • 関税撤廃率に関し、ASEAN構成国等とは我が国が既に締結しているEPAの範囲内の水準(61%(TPPは82%))、中国及び韓国とはそれよりも低い水準(対中国56%、対韓国49%)に抑制した。

  • 我が国にとって初のEPAとなる中国に対しては、同国からの輸入額が大きい鶏肉調製品や、国内生産者団体が加工・業務用で国産品の巻き返しを図りたいとする野菜等(たまねぎ、ねぎ、にんじん、しいたけ、冷凍さといも、冷凍ブロッコリー、うなぎ調製品等)について関税削減・撤廃の対象とせず、関税撤廃するものについても国産品だけで国内需要を賄うことが難しいものや、国産品と棲み分けができている野菜等(乾燥野菜、朝鮮人参、貝調製品等)、長期の関税撤廃期間を確保している。

  • 酒類のうち、紹興酒、マッコリ、白酒、ソジュについては長期の関税撤廃期間を確保した(21年目に撤廃)。


これだけ見ると、正直「あれ、ショボいなー、しかも撤廃までの期間が長いし。」と思う。

しかし日本にとって(日本以外の全ての国も)EPAの最大の目的は輸出拡大であるため、輸入品に対する門戸を開かないと輸出品拡大の効果が薄くなる。まさにバーターの世界なのだ。しかしいつまでも自国の農業の保護と称して輸入食品に高関税を付するのはどうだろうか。当然日本の素晴らしい品質と味を誇る食品の輸出拡大の障害となる。人口が減少し、後継者不在も問題視されている日本。販路を国内だけに求めるのではジリ貧になるだけだ。海外の多くの国でMade in Japanが不可欠となり、他国の生活に不可欠となるものが増える事が、日本のプレゼンスを高める一つのファクターになるのではないか。


日本には資源が少ない。化石燃料や米以外の穀物、今ではレアメタルなど、調達のために他国に揺さぶれるのと同じように、日本もかつての家電や半導体のように相手国を揺さぶられるだけの輸出品を持たなければならない。日本が世界に誇れる物。それは農産物ではないだろうか。保護政策ではなく、自動車のように世界戦略の可能性もあるのではないか。もちろん狭い国土で生産量は限られる。しかし継続的に輸出を続けていくことで、他国にとっても不可欠な物となるものがあるはずだ。守りから打ってでる施策が今の日本には必要だと思う。まだまだ今の日本は自国の農業や食品加工業の保護を重視するために、輸入食品に対する関税は相変わらず高関税率が維持されそうだ。



沖縄県産品の輸出に好材料は見出せるだろうか。

インドネシア向け牛肉の輸出はどうだろう。日本人でも沖縄県産牛肉には中々手が出ない現実の中、平均所得が日本の10分の1以下のインドネシアでは、外国人観光客や一部の富裕層など、かなり限定的な需要となるだろう。


日本で第2の生産量を誇る沖縄の電照菊を中国に輸出する機会は増えるだろうか。国産第1位の愛知県産と比較すると気温の関係から生産コストが低い沖縄の菊は、愛知県産の生産量が落ちる冬季に出荷量が増える。しかし最近ではべトナムやマレーシアから輸入しているくらい、価格での競争力が低いため、勝機があるとすれば品種改良を重ね品質を高める必要があるだろう。もともと菊の原産地は中国で、その歴史は3000年以上前にさかのぼると言われている。中国の巨大市場に2位とはいえ愛知県の3割にも満たない出荷額では大きなビジネスチャンスになるとは考えにくい。正直沖縄に大きな経済的効果は期待できない気がする。中国に対して段階的に関税が撤廃される、パックご飯、米菓、さけ、切り花、清酒などを見ていると、「新潟県はいいなあ」と思う。ここにも政治の影が見え隠れしているのではないか、と勘繰ってしまう。


沖縄の経済の発展には一括交付金の増額などではなく、行政主導による地域のブランド化と、中央政府との良好な関係が不可欠だと思う。我々ロジスティーダジャパンも日々県産品の輸出と国際ブランド化に貢献したいと願っているが、まずは地盤固めから着手しないとならないようだ。10年、50年、100年先を見据えて取り組んでいきたい。














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