海上貨物を扱っていると、必ず「バンニング」や「デバン」という言葉を使うようになります。バンニング(Vanning)は、貨物をコンテナに積み込む作業を指します。プロボックスやサクシードのような営業車両をライトバンと言ったり、ハイゼットやエブリーのような軽貨物車を軽バンと言ったりしますが、同じ語源です。業界ではバンニングのことを「バン詰め」、空のコンテナを「空バン」と呼ぶこともあります。
一方でデバンニング(Devanning)とは、コンテナから貨物を降ろす作業のことです。VanにDeを付けることで反意語になるわけです。単にデバンと言うこともあります。
バンニング作業で大切なことは、輸送中に荷崩れを起こさないようパレットごとラップやテープを巻いたり、パレタイズされた貨物の隙間に緩衝材を入れて固定したりして、貨物にダメージ起きないよう対策を施すことです。高くパレタイズされた重量物は自重で潰れてしまうことも多いので、ダブルフルートカートンを用いてレンガ積みやピンホール積み、ブロック積みを選択します。意外かもしれませんが、圧縮強度はシンプルなブロック積みが一番強いのですが、揺れで生じるロッキング現象はブロック済みが一番起こりやすくなります。
バンニングもデバンニングも路上で行うわけにもいきません。専用の施設でフォークリフトなどを用いて行いますので、これらの作業を委託する場合は手数料が発生します。
コンテナにはいくつか種類があります。海上コンテナの代表的なサイズは次の3種類です。
①20フィート(20ft)
②40フィート(40ft)
③40フィートハイキューブ(40HQ)
海上コンテナの種類は次の2種類です。
①常温コンテナ(Dry Container/GP)
②リーファー・コンテナ(Reefer Container)
他にも、天井部分がなく、重量物や嵩高物をコンテナ上部からクレーン等を使いバンニングすることができるオープン・トップ・コンテナ(Open Top Container)や、天井だけでなく側面もなく、通常のコンテナでは輸送が困難な大型の貨物を上部や側面からバンニングすることが可能なフラット・ラック・コンテナ(Flat Rack Container)やフラット・ベッド・コンテナ(Flat Bed Container)があります。
20フィートコンテナの長さは約6m, 40フィートは約12mです。40フィートコンテナの高さは、8フィート6インチ(8’6’’)なので「ハチロク」、40fハイキューブコンテナの高さは、9フィート6インチ(9’6’’)なので、「クンロク」と呼んだりもします。
40fと40HQの料金は変わらないことが多いので、大量の貨物を積み込むときは自由度の高い40HQをお勧めします。しかし搬入する施設の天井高に注意が必要です。40HQは中古車の輸出によく使われます。普通車だと40HQに4台はバンニング可能です。もっとも専門業者の職人技があってこそなので、素人だと2台が限界ではないでしょうか。
コンテナへのバンニングはどこで行い、どのようにコンテナ船に船積みされるのでしょうか。おおよそは次の手順になります。
①船会社(フォワーダー)にコンテナのブッキング(予約)をした後で、空コンテナの取り場所とバンニング後の実入りコンテナの搬入先を確認する。
②運送業者にドレ―ジ手配をします。コンテナを輸送するためにはトレーラーが必要です。どのCY(コンテナヤード)から空バンをピックアップするのか、どこでバンニングをするのか、どのCYに実入りコンテナを搬入するのか、などを確認します。
③ドレージされた空コンテナに貨物をバンニングします。貨物を積み込む前に必ずコンテナの天井や壁に穴が開いていないかを確認しましょう。弊社では不幸にも雨中輸入コンテナの天井に穴が開いたまま荷主にドレージして、貨物が水浸しになってしまったことがあります。バンニングした後だと天井や壁が見えなくなるので、空バンの状態確認は輸出者の責任です。
④船の揺れなどによって荷崩れが起き、貨物にダメージが起きないように貨物の固定や重量バランスに注意しながらバンニングします。輸入地までコンテナが開封されていないことを証明する、金属製のシールでコンテナの扉を封印します。このシールは使い捨てで個々にSeal No.と呼ばれる番号が振られています。このシールナンバーはB/L(船荷証券)にも記載されますので、バンニング後のコンテナが未開封であることを、輸入地にてデバンニングする際に確認します。しかし過去にシールが切られていないにも関わらず、あらびっくり中身がスッカラカン、ということがありました。運送業者がCYから間違って空バンをドレーしてきたのかと思いましたが、そうではなく、何者かがコンテナの両扉を蝶番もろとも外して中身を完全に抜き取り、また扉を元に戻していた、という驚くべき経験があります。シールされているハンドルごと外して、開封したことが分からないように元に戻しているケースもありました。今のコンテナは強度も構造も盗難対策が取られていて、簡単に外されないようになっていますが、盗難は常に貿易上のリスクとなります。
⑤作業が終了した実入りコンテナをコンテナターミナルに搬入します。実入りコンテナをターミナルに搬入した後で輸出申告を行う場合もありますが、保税地域でバンニングして輸出申告後にCYに搬入する場合があります。
⑥CYで本船にコンテナが積み込まれます。
逆にデバンニングは次のような流れになります。
①入港日が近くなるとArrival Notice (A/N)が輸入者のもとに届きます。船会社にB/L(船荷証券)原本の差し入れ、CYチャージの支払いなど、コンテナをCYから搬出するための手配をします。
②本船からの荷卸しが終わりCYからコンテナを搬出する場合、外国貨物のままコンテナをデバンニング地まで保税運送する場合や、CY通関を行い内国貨物の状態でドレージする場合があります。ドレージの手配が付かなかったり、ドレージ先のスペースの都合などでコンテナをCYに置いたままの状態をディテンションと言います。ディテンションが長くなると、加算料金が発生します。
③コンテナが到着してデバンニングを行う前に、扉を封印している金属製シールのナンバーがB/Lに記載されているものと一致しているか確認をしてからシールをカットします。次にコンテナ自体に異常がないか? 貨物の状態に異常がないか?貨物の内容に相違がないか? を必ず確認します。ダメージがあった場合、責任の所在を特定する必要があるので、可能な限りその状態を維持して保険会社に連絡をします。保険会社の指示で画像が必要となる場合が多いので、その状態を維持できない場合は写真撮影して梱包資材は保管しておきます。被害が大きい場合はサーベイヤーが調査に入る場合もあります。
④運送会社にデバン後の空コンの返却を依頼します。デバンニングに時間が掛かりコンテナを搬入先に置いたままのことをデマレージと呼びます。デマレージも一定の日数が経過すると料金が発生します。
本部の人間がDXだICTだと声高に叫んでも、バンニングやデバンニングは職人作業の領域です。コンテナを積み降ろしするガンマンや、コンテナからフォークリフトを使ってバンニングやデバンニングを行う荷役作業はまだまだ自動化が難しいでしょう。物流の現場は3Kだと言われたりしますが、訓練・経験・勘が必要なカッコいい仕事の3Kと思っています。
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