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備えあれば憂いなし

2022年6月7日

まもなく沖縄の梅雨が明け、夏至南風(カーチーベー)が吹けば力強く美しい沖縄の夏がやってきます。誰もが沖縄をイメージする時に思い描く海とティーダの季節です。


同時にアイツもやってきます。そう、台風。

沖縄の台風は主に「風」台風で、九州のような甚大な水害は滅多には起こりません。(今年は珍しく雨が多く水害もありましたが) その代わり立っているのもままならない暴風に晒されます。台風の予報が発表されると、植物や農作物が吹き飛ばされないように防風ネットで対策を施したり、停電に備えて電池や食料も買い込んだりします。


私が沖縄に住むとき、不動産屋さんから引き渡し時に言われた言葉が「台風時は玄関のドアに気を付けないと指が吹っ飛ぶよ」でした。「んなことないだろ」と思っていましたが、実際に危ない思いを何度もしました。幸い20年後の今も指は残っていますが、大きな台風時にはその類のニュースに震撼します。


まだ映画をDVDとかで見ていた時代は、台風が来る直前にはレンタルビデオの最新映画が軒並み貸し出し中になっていました。皆、台風で学校や会社も休みになったりするので、お家で楽しむための準備は欠かせません。


それでも実際に台風が来ると、高層階にある我が家の窓のガラスが部屋側にブワッと膨らんでくるので、落ち着いてテレビなど見てられません。ガラスが割れるのが怖くてガムテープで全ての窓をバッテン印に補強したりしていました。面倒で台風が去った後もそのままにしていたら、近所からは「怪しい宗教の家」、と恐れられているのを知ったのはだいぶ後の事です。


台風と言えば2018年9月に関西地方を襲った台風21号が忘れられません。当時勤めていた免税店の倉庫が関西空港ターミナルの地階にあったのですが、見事に冠水して数億円のブランド品を全て滅却処分した苦い経験があります。沖縄で救援部隊を編成して関空倉庫の復旧に当たったのですが、ヘドロ水をたっぷり吸ったバッグなどは、とんでもない重量となります。台風から2週間経っていましたが、逆さにすると黒い水が床に拡がります。湿気と臭気と何万個という商品を全て袋詰めにして産業廃棄物として処分する過酷な作業もそうですが、1個数万円のバッグを泣く泣く廃棄した時の虚しさは今でも忘れることは出来ません。


濡れていない商品も臭いがついて売り物にはならなかったのです。それでも店舗の被害は少なかったので、営業はまもなく再開出来ました。もう二度と同じ思いはしたくなかったので、倉庫を関空の対岸のりんくう地区に移転しました。移転した建物の9階から一望できる泉南地区の風景は、青いビニールシートで覆われていました。その会社を退職するまでの3年間、しばしばりんくうに行きましたが、ブルーシートの風景は中々消えませんでした。


ところで台風被害からの復旧にボランティアの存在が欠かせません。被災地には全国から心あるボランティアが駆けつけます。ところが行政のDX化は笑ってしまうほど進んでおらず、多くの管理作業がマニュアルとなります。

プロボランティアの株式会社コンサイド・畑社長が言うには、「人員受付や作業割り当ては手作業で行われ、実際にボランティアが動ける1日の時間は3~5時間」だそうです。

早朝に駆けつけたボランティアが受け持ちの地区で作業を開始するのはお昼頃で、点呼のために午後4時までにはボランティアセンターへ戻るので、復旧活動も遅々として進まないばかりか、ボランティアのモチベーションも低下しかねない状況です。何にしても社会福祉協議会ボランティアセンター(通称・ボラセン)のスタッフが可哀そうで見ていられない、という理由で、その畑社長が素晴らしいシステムを開発しました。


広域型災害ボランティアセンター運営支援システム「JoyLinks」です。通常なら導入にかなりの投資が必要となるシステムですが、畑社長の思いで開発したこのシステムはリーズナブルで、どの社会福祉協議会にも導入が可能です。これこそボランティアです。

私も畑社長とともに沖縄県社会福祉協議会に「JoyLinks」の説明に伺いましたが、とてもこのシステムの有効性を理解して下さいました。


願わくはこの「JoyLinks」の出番などない災害のない世の中がいいですが、いつどこに次の災害が襲ってくるか誰も分かりません。備えあれば憂いなし。行政側も先回りした対策を施して欲しいものです。

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