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山菜取り

2024年4月10日

むかし友人が黒部ダムのプラントの仕事をしていた関係で、春になると毎年山菜取りに遊びに行った。一般の人は滅多に立ち入ることのない秘境だったので、あらゆる山菜が取り放題だった。タラの芽、コシアブラ、ワラビ、ゼンマイ、コゴミ、フキノトウなど、山菜を採ったはいいが、問題は食べる時だった。友人は民宿に長期滞在していて、自分で料理する場所も道具もない。生で食べることは出来ないので、仕方がないので横浜の自分の家まで山菜を持ち帰り、その友人と一緒に食べた。山菜がもっとも美味しいのは、何と言っても天ぷらだった。エグみがなくなりいくらでも食べられた。たらふく食べて飲んで、次の日には友人は黒部に帰って行った。恒例の春の楽しみだったが、何年後に友人が別の場所に転勤したのを機に山菜取りに行くこともなくなった。

 

山菜で一番好きなのはタラの芽だ。初めて食べたのは軽井沢の居酒屋だったと思う。タラの芽がどのような植物だったか知らなかったが、食べた時の衝撃は今でも忘れない。こんなウマい野菜(ではないが)がこの世に存在していたのかと驚いたものだ。

 

今では沖縄でもタラの芽の栽培物が簡単に手に入るが、やはり野生のモノとは鮮度はもちろん味の深みや苦みが違う。また取りに行ってみたいが、熊に出くわすのは山菜取りかキノコ採りの時だ。山菜も気軽に取りにいけない時代になった。

 

もう一つ春の味覚と言えばタケノコだ。これも何回か北アルプスの栂池方面に例の友人と取りに行った。孟宗竹ではなく、ネマガリタケという細いタケノコだ。笹の生い茂った背の低い藪を掻き分けて入っていくと、反動で自分の顔めがけて竹の先端が戻ってくるので、ヘルメットとゴーグルと軍手は欠かせない。夢中になって藪を奥に奥に入り遭難する人も多いので、起点からロープで自分の身を繋いでおく。こちらは車でアプローチ出来るので、ライバルも多い。収穫すると、直ぐにその場で鍋にお湯を沸かし、茹でてマヨネーズを付けて食べると腰を抜かすほど旨い。酒は飲めないので、雨飾温泉に浸かって黒部と横浜に別れて帰った。

 

若い時は日本が狭かったなあ、と今は思う。

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