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中国に対する越境ECスキーム

2001年に中国がWTOに加盟して以来、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、2004年には世界3位の貿易大国となった。

日本から中国に対する越境ECなど起こり得ないと思われていたが、ここ数年で徐々に普及しつつあったものが、コロナであっという間に新規参入が拡大している。


これから参入を目指している企業も少なくないと思う。その理由として中国政府が免税枠を拡大、規制緩和を行い、中国側での配送サービスが安定したことが大きな理由だろう。

プラットフォームが日本側にあっても中国側にあっても、物流の観点では大きく「直送モデル」と「保税区モデル」の2つのスキームに大別される。



直送モデルは文字通り日本国内から中国国内の消費者に販売商品を、EMSやクーリエサービスなどを利用して直接発送することだ。


直送モデルの特徴は、中国国内への輸入の際には、個人の荷物や郵便物に対する簡易課税方式である行郵税が課税されることで、比較的規制を受けにくいビジネスモデルと言える。

50元以下の場合は免税となり、50元を超える場合の税率は13%、20%、50%の3段階となっている。13%は雑誌や書籍、食品、家具、玩具、薬品などが代表的なものとなり、

20%はスポーツ用品やレジャー用品、紡績品などがあり、50%はいわゆる「ブランド品」がその対象となる。


「直送モデル」は物流に関して大掛かりな投資が必要ない一方、個別での輸出入と国際運送が必要になるため、コスト高になりやすい。また地域によっては確実に届かないなどのトラブルもあり、トライアルや小規模事業者に向いているモデルと言える。



一方「保税区モデル」は、中国国内の保税区域に保管されている商品が発送されるか、日本から保税区を経由して消費者に発送される。このモデルは一般貿易と同様に、輸入の際に関税、増値税、消費税が課税される。しかし現在は暫定措置として取引一回あたり5000元以下、かつ年間取引26000元以下であれば、関税は免除、増値税と消費税は30%減税となっている。


「保税区モデル」は対象品が制限されており、「越境EC小売輸入商品リスト」(以下ポジティブリスト)に掲載されているものだけが取引可能となる。このポジティブリスト品目の輸入に際しては輸入許可証の提出は免除されるが、一部の商品は検験検疫法定検査目録に基づく原産地証明・検査検疫証明等の提出が必要である。また初めて輸入される化粧品やサプリメントなどについては、国家医薬品監督管理局から許認可取得や登記といった手続きが必要である。(但し現在は越境ECに対する輸入管理制度の施行が延期されており、前述の手続きは不要となっている)



中国には通称EC法という「中華人民共和国電子商取引法」が電子商取引を規制しており、特に越境EC事業者が注意すべきは第26条である。


この26条には、『「電子商務経営者」が越境ECを行う際は、輸出入監督管理などの関連法律・法規を順守する義務を負う。』ということが明文化されている。

具体的には越境ECで販売する商品は一般貿易扱いとなるので、中国国内の必要な申請や認証が義務づけられるということだ。

必要になるのが、下記のCFDA登録とCCC認証である。



CFDA登録

CFDAは「China Food and Drug Administration」で、中国でこの登録が必要となる品目は、化粧品、医薬品、医療機器、保健食品となっており、2019年1月1日よりCFDA登録のない商品は通関できないことになっている。

CFDAの認可登録までは、製品の成文チェック、検査資料の提出、中国における検査など、様々な手続きが必要である。


CCC認証

CCCは「China Compulsory Certification」の略で、この認証がないと輸入・販売が認められない。

CCC認証の対象となるのは、2019年現在で20カテゴリー158品目となっている。主に、電気機器や自動車関連部品、防犯製品、玩具類などとなっている。



一方で越境EC輸入販売政策の規制延長が施され、2019年1月1日より「越境EC輸入販売政策」が延長されている。これは2016年に施行された、越境EC新制度による規制制度だったのだが、結果的に毎年、実施の猶予・延長されている。事実上の緩和だ。

緩和の内容は次の通り。


①許認可・届け出が不要

新規の輸入に対して、通関証明書の提出と一部指定商品の初回輸入時の輸入許可証、登録、届け出が必要という通関手続きに関するものが、越境EC新制度によって、輸入許可書、登録、届け出の必要はなくなった。

簡単には、法規に則した越境EC手続きにおいて、通関申告書や輸入許可証の提出が不要であることが明記され、中国語表記の商品ラベルの貼付も不要となっている。


②越境ECエリアの拡大

越境ECの適用地域は2018年末までは15都市だったが、新たに22の都市が追加された。これによって、中国主要都市の殆どがカバーされることになった。具体的には保税区が増えたということになる。


③一人あたりの購入限度額の引き上げ

個人の越境ECでの1回あたり、さらに年間の購入額の上限が引上げられた。

1人が購入する金額   従来の購入限度額     新しい購入限度額

1回あたりの購入限度額     2,000元 (約32,000円) 5,000元(約80,000円)

年間の購入限度額    20,000元(約321,000円) 26,000元(約416,000円)


④輸入関税優遇商品の追加

税金適用商品が新たに63種類追加された。2019年からは、新たにスパークリングワイン、麦芽原料のビール、トレーニング機材が追加されている。

これらの少品種は、輸入関税の優遇が受けられるもので、俗にポジティブリストと呼ばれている。


⑤優遇税制の据え置き

越境ECサイトでの関税が0%、増値税と消費税70%掛けが税制優遇が据え置かれている。



一方で「電子商務法」による規制の強化も行われている。


①税関における登記義務

中国での越境EC事業者は、法人・個人に関係なく中国税関における登記手続きが義務付けられた。先述しているCFDA登録やCCC認証がこれに該当する。


②消費者権益の保護義務

消費者に関しての個人情報の管理強化、さらには抱き合わせ販売による制限などが明確化されている。ECサイト内に商品に関する注意事項などを正確に告知することが義務付けられている。


③営業許可証等の公示義務

ECサイト内の分かりやすい箇所に、営業許可証や事業ライセンス情報を掲示することが義務付けられている。


④虚偽広告等の禁止

商品やサービスにおいての虚偽情報の発信の禁止が明確にされている。


⑤紛争対応義務

商品自体、販売に対して大きな問題が発生した場合、中国当局から求められる資料の提出や、リコール対応など適切な対応をしなくてはいけないことが義務付けられている。



輸入手続きの簡素化は、さらなる越境EC事業への参入を促すもので、取扱商品の拡充も参入を促す一助になっているのは間違いない。

一方で、前述の通り規制も行われている。しかし日本のECサイトでも定められているものなので、中国にだけ特別必要なものでもない。とはいっても、日本国内のEC事業以上に、中国越境ECサイトでのコンプライアンス順守は重要だ。中途半端な知識で始められるものではなく、法務対策もしっかりと準備して取り組む必要がある。

いうまでもなく、知財に対する調査も必要だ。


今の中国はかつての商業的無法地帯ではなく、先進国として日本以上に輸入品に対して開かれつつも厳しくなっていることを忘れてはならないだろう。





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