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米国向け貨物におけるデミニマス廃止

  • hiroyuki kira
  • 9月27日
  • 読了時間: 3分

2025年8月29日、米国向け貨物に大きな変化が起きました。長年、輸出者や越境EC事業者を支えてきた「デミニマス制度」が廃止されたのです。従来は800米ドル以下の貨物が免税対象でしたが、今後は原産国に関わらずすべての貨物が課税対象となります。この変更は単なる制度改正にとどまらず、貿易の現場で働く関係者の仕事の進め方にも影響を及ぼします。

 

そもそもデミニマス制度は、少額貨物の免税によって手続きを簡素化し、コストを抑えるための仕組みでした。しかし近年、中国などからの低価格商品が急増し、米国国内の産業や雇用、税収に影響が出始めました。さらに、小口貨物だからといって簡略化された安全確認が、偽造品や規制対象品の流入を許してしまうことも少なくありませんでした。このような状況を考えれば、免税枠の廃止は避けられない流れだったと言えます。

 

政治的な背景も無視できません。トランプ前大統領の影響力が再び注目される中で、「アメリカ第一主義」に基づく保護貿易政策が色濃く反映されています。低価格輸入品への規制強化は、国内生産者や製造業労働者を守る戦略的判断とも見なせます。今回の廃止は、こうした政治的思惑とも密接に関わっているのです。

 

実務の現場では、これまで免税で発送できた小口貨物も、関税や税金の対象になります。例えば米国向けに50ドル程度のシャツを発送する場合でも、関税が加算され、消費者への負担が増す可能性があります。実際に現場からは、「越境ECで安く買えたのに追加の課税通知に驚いた」といった声も聞こえており、販売後の顧客対応が増えることも予想されます。

 

通関作業も変化します。インボイスにはHSコードや原産国、正確な申告価額の記載が必須で、過少申告は厳しいペナルティの対象です。小口貨物を扱う企業では事務負担が増え、通関業者との連携や社内手続き体制の見直しが必要になります。

 

とはいえ、今回の変更がすべてマイナスというわけではありません。たとえば、日本から工芸品を輸出する場合、安価な大量商品に埋もれてしまうリスクが減り、品質やブランド価値を消費者に伝えるチャンスが生まれます。中長期的にはFTAを活用して関税を軽減したり、米国内に在庫拠点を設けて効率的に販売するなど、戦略的な選択肢も広がります。

 

今回の制度変更は、単に「免税が終わった日」ではなく、米国向け輸出を次のステージに進めるための出発点です。価格戦略の見直しや顧客対応、正確な申告といった基本を押さえつつ、現場感覚を持って対応することが求められます。米国市場の動向を見ながら、自社に合った輸出戦略を構築することが、今後の成功につながるでしょう。

 

今後も通関業者とこまめに連絡を取り、インボイスの正確な作成を徹底することが、スムーズな通関の第一歩です。発送前には必ずHSコードと関税率を確認しましょう。

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