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革靴と関税割当、そして日EU/英 EPA

靴好き、と自他共に認めるなら英国製かイタリア製の2択になるだろう。

フランスのパラブーツやアメリカのオールデンなど、熱狂的なマニアが多いブランドもあるが、パラブーツやオールデンが好きだからフランス製やアメリカ製の靴が好きとはならないのが厄介だ。私はイタリア靴一択だが、革靴について議論すると炎上するのでこのくらいにしておく。


今回は革靴に対する関税割当とEPAについてお話したい。

前述の英国製やイタリア製の革靴を輸入する場合、関税割当(TQ=Tariff Quota、以下TQ)

を使って低税率で輸入していた業者さんも多いと思う。


TQとは一定の輸入数量の枠内に限り、無税又は低税率(一次税率)の関税を適用して、需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方、この一定の輸入数量の枠を超える輸入分については、比較的高税率(二次税率)の関税を適用することによって、国内生産者の保護を図る制度である。輸入割当と異なり、二次税率適用での輸入数量に制限はない。


TQを管理する経済産業省では、現在、皮革(①牛馬革(染着色等したもの)、②牛馬革(その他のもの)、③羊革・やぎ革(染着色等したもの))、④革靴(革製及び革を用いた履物(スポーツ用のもの及びスリッパを除く。))の4つの品目の割当てを行っている。

革靴のTQを増やす(維持する)ために、苦労している輸入者も多かったと思う。私もかつては革靴の輸入のために、毎年経産省に赴き、前年の輸入実績を上回るTQを獲得するために苦労した経験がある。



ところがである。2019年に発効された日EU EPA、2021に発効された日英EPAによって、イタリアやイギリスから革靴を輸入するために、もはや苦労してTQを獲得する必要がなくなったのだ。

どういうことかというと、革靴の2次税率が日EU EPA発効時に撤廃され、(要件を満たしていれば)TQなしでも1次税率(17.3~24%)が適用されるのだ。その1次税率も毎年約2%づつ段階的に引き下げられ、11年後の2029年には関税フリーになるという購入者にとっては素晴らしい協定なのだ。もちろん日英EPAも内容は日EUに追随しているので、2031年には同様に無税になる。単純に考えれば2割程度、EPA発効前の価格に比べてお得になるはずだ。


しかし経産省よくやった!と手放しでは喜ぶには早い。だってそうでしょう。関税フリーだからって輸入販売業者が価格設定を2~3割下げるとは限らないし、仮に下げたとしても、ハンドメイドが多く、職人気質の多いイタリアや英国の靴メーカーがすぐに生産量を増やすとも思えない。供給量が変わらないとすれば、関税フリーで日本国内の輸入者が沸き立って需要が高まる中、単純に価格って下がるのだろうか。この点あまり期待できない気がする。


日本政府も「国内の靴好きが欧州の革靴を安く買えますように」などと願ってEPA交渉しているわけでは全くない。それよりも日本から輸出する自動車や農産物、酒類の関税撤廃を重要視しているのだ。RCEPの記事でも述べたが、EPA(FTAも)は所詮国と国とのバーターの世界。工業製品や食品の輸入関税を欧州で下げて欲しければ、日本も何かの輸入関税を下げなければ交渉はなりたたないのだ。


いい靴なら丁寧に手入れをしていれば、10年以上余裕で履き続けられる。長い目で見れば2~3割の価格差よりも本当に気に入ったものを必要な時に買う方が結局お得ではないだろうか。

何にしても国内の皮革業界が保護され過ぎていただけの話で、ようやく内外皮革製品の土俵が同じになったということだろう。

今週末は靴を徹底的に磨こうと思う。




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