DGD(危険物申告書)とは - 航空危険品輸送の基礎知識
- hiroyuki kira
- 6月4日
- 読了時間: 3分
航空貨物の中には、見た目には普通の製品であっても「危険物」として特別な取り扱いが必要なものが数多く存在します。たとえば、リチウム電池、スプレー缶、塗料、香水、医薬品などがその一例です。
空港での保安検査の際に「スプレー缶やバッテリーはお持ちですか?」と尋ねられた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それも本項と無関係ではありません。
このような「危険物」を航空機で輸送する際には、必ず提出しなければならない書類があります。それが DGD(Dangerous Goods Declaration : 危険物申告書)です。
今回は、DGDの基本から記載内容、実務上の注意点までの要点を解説します。
DGDとは?(概要)
DGDは、IATA(国際航空運送協会)の「危険物規則(DGR: Dangerous Goods Regulations)」に基づいて作成される書類で、危険物を航空輸送する際に荷送人(Shipper)が責任をもって作成・提出する必要があります。
DGDの主な目的は以下の通りです:
・輸送される貨物が「危険物」であることを正確に申告する
・梱包、表示、マーキング、ラベル貼付がIATA DGRに準拠していることを証明する
・航空会社、地上作業者、通関業者など関係者へ正確な情報を提供する
DGDの記載内容(主な項目)
DGDには、以下の情報を正確に記載する必要があります:
項目 内容例
Shipper(荷送人) ABC Corporation, Tokyo, Japan
Consignee(荷受人) XYZ Ltd., Frankfurt, Germany
Air Waybill番号 123-45678901
UN番号 UN3480(リチウムイオン電池)
正式名称(Proper Shipping Name) Lithium ion batteries
クラス(Class) Class 9
包装グループ(Packing Group) 該当なし(品目により異なる)
数量と梱包内容 3 boxes, 5kg each
署名・日付 荷送人の署名と作成日
※ 記載内容は IATA DGR最新版 に準拠する必要があります。
よくあるミスとその影響
(ミスの内容) (想定される影響)
UN番号の誤記 輸送拒否・再提出
ラベルやマークの不備 輸送遅延・ペナルティの発生
DGD未提出・期限切れ 積載拒否・貨物没収の可能性あり
実際に、アジア某国の空港で DGD未提出のまま出荷された危険物が没収され、日本企業側に数十万円規模の損害が発生した事例も報告されています。書類の正確な管理は極めて重要です。
誰が作成する?DGRトレーニングの必要性
DGDは、基本的に荷送人(Shipper)の責任で作成します。通関業者やフォワーダーが代行することもありますが、その場合でも最終的な確認と署名は荷送人が行う必要があります。
IATA DGRトレーニングとは?
危険物を取り扱う事業者には、IATA認定の「DGR講習」を受講し、修了証を保持した担当者を配置することが義務付けられています。この資格は 2年ごとの更新が必要です。
意外と多い!? 「危険物」に該当する貨物の例
商品例 クラス 備考
モバイルバッテリー Class 9 UN3480 / UN3481
香水 Class 3 引火性液体
スプレー缶(ヘアスプレー等) Class 2.1 可燃性ガス
塗料(溶剤系) Class 3 UN1263
見た目に危険でない製品でも、規則上は「危険物」に分類されることがあります。とくにリチウム電池関連は外装上だけで判断すると誤認の可能性が高いため、注意が必要です。
まとめ:DGDは「正確な申告」が命
DGDの記載ミスや未提出は、輸送拒否・遅延・罰金、さらには貨物の没収といった重大なトラブルにつながります。IATA DGRに準拠した正確な情報提供と適切な書類作成が、安全な航空輸送には不可欠です。
危険物の航空輸送に不安がある方は、早めにLOGISTIDA JAPANにご相談くださいませ。
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