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FOBとFCAの使い分け

  • hiroyuki kira
  • 1月15日
  • 読了時間: 4分

インコタームズの中で、誰もが一度は耳にしたことのある条件といえば「FOB」や「CIF」ではないでしょうか。

しかし、これらの条件は「知名度の高さ」と引き換えに、現代の輸送実務との深刻な乖離を抱えたまま使われ続けているのが実情です。

 

本稿では、特に FOB と FCA に焦点を当て、インコタームズの「建前」と、現場で起きている「現実」のギャップを整理します。

 

① 海上輸送:FOBの「欄干」は、2010年に過去のものとなった

 海上コンテナ輸送において、FOBの「船の欄干(Ship's Rail)」という概念は、実務上ほとんど意味を持たなくなっています。かつてFOBは「貨物が船の欄干を越えた瞬間にリスクが移転する」という境界線でしたが、現在は定義が変更されています。

 

【インコタームズ2010/2020の定義】

2010年の改定時、この点は明確に修正されました。現在のFOBの危険移転時点は、「貨物が本船に積み込まれたとき(on board)」と定義されています。しかし、この変更はあくまで「用語の整理」にとどまり、現場で生じているギャップが解消されたわけではありません。

 

② 「管理不能な空白期間」のリスク

 

コンテナ輸送では、輸出者は貨物を港のCYやCFSに搬入します。その後、貨物が実際に本船に積み込まれるまでにはタイムラグがあり、その間、貨物はターミナルオペレーターや船社の管理下に置かれます。

つまりFOBを選択している場合、輸出者は「自ら管理も介入もできない場所」で発生する事故リスクを、本船積み込みが完了するまで背負い続けることになります。万一、ヤード内での荷崩れや火災が発生した場合、その責任の所在は極めて曖昧になりがちです。

 

FOBが理論的に成立するのは、以下のようなケースに限定されるべきです。

・在来船・バラ積み船(クレーンで直接吊り上げるなど、売主が船積みに関与できる場合)

・コンテナ化できない特殊貨物

 

現代のコンテナ輸送において、FOBを標準条件として使い続ける合理性は、ほぼ失われています。

 

③ 航空輸送:FCAが最適解である「動かぬ事実」

 

航空貨物輸送において、輸出者が航空機に直接貨物を積み込むことは物理的に不可能です。輸出者の責任範囲は、フォワーダー、航空会社、または指定された保税倉庫のいずれかに貨物を引き渡すまでに限られます。

この「実態」をそのまま反映している条件が FCAです。

 

これらを踏まえると、輸送モードごとの適合条件は次のように整理できます。

 

輸送モード            推奨条件             危険・費用の移転ポイント

コンテナ・航空      FCA                指定された引渡地で運送人に引き渡したとき

在来船・バラ積み          FOB                貨物が本船上(On Board)に積み込まれたとき

 

実務の流れに沿えば、貨物を運送人(Carrier)に引き渡した時点で責任が完了するFCAが、最も理にかなった条件であることは明白です。

 

④ なぜFCAは普及しないのか? ―「慣習と心理の壁」

 

FCAが理論的に優れているにもかかわらず、現場で敬遠されがちな理由は、「制度」ではなく「心理」にあります。

 

・長年の商慣習とL/C取引の圧力

数十年にわたりFOBが標準条件として使われてきた結果、契約書や銀行の信用状(L/C)、社内規程がFOB前提で組まれています。FCAへ切り替えるには、社内外への相応の説明コストが伴います。

 

・費用負担と危険移転の混同

「誰が運賃を払うか(=費用負担)」という視点のみでインコタームズを捉え、「FOBチャージ(輸出諸掛)」といった言葉が定着したことで、本質である「リスクの移転」が後回しにされてきました。

 

・「最後まで見届けたい」という心理的不安

FCAでは指定場所で責任が終了するため、その後の通関や積載を相手側に委ねることに不安を覚える輸出者も少なくありません。しかし、管理できないリスクを負い続けることの方が、本来はより大きなリスクです。

 

・結論:条件は「慣れ」ではなく「実態」で選ぶ

FOBが「悪い条件」なのではありません。使われるべき場面と、そうでない場面があるだけです。

コンテナ輸送・航空輸送     →  FCA

在来船・バラ積み             →  FOB

この基本を徹底するだけで、契約リスク、保険設計、事故時の責任所在は格段に明確になります。

 

インコタームズは「形式」ではなく、現場の流れを正確に写し取るためのツールです。

今一度、貴社の取引条件が「実態」に即しているか、見直してみてはいかがでしょうか。

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