保税地域は英語でBonded Areaと言い、指定保税地域、保税蔵置場、保税工場、保税展示場、総合保税地域の5種類があります。保税地域においては、外国貨物の積卸し、運搬、蔵置、加工・製造、展示などの行為をすることができますが、関税徴収の確保及び取締りの適正を期するため、保税地域にある外国貨物は税関の監督下におかれ厳正な管理を要求されます。またそれぞれの保税地域の許可条件は貨物を安全適正に管理するため、人的要件や設備要件などが求められます。また申請から許可まで数か月要する場合も少なくありません。
(1) 指定保税地域(関税法第37条)
国や都道府県、市のような地方公共団体などが所有したり、管理している土地や建物など公共的な施設について、財務大臣が指定して設置するものです。指定保税地域は、税関手続を簡易、迅速に処理するために設けられたものです。指定保税地域では、輸入手続が済んでいない貨物、輸出の許可を受けた貨物、日本を通過する貨物など「外国貨物」を積卸し、運搬し、又は一時(原則として1か月以内)蔵置することができます。
指定保税地域は本来、貨物の税関手続と荷さばきのため、だれでも自由に、しかも安く利用できることを理想とするので、長期間貨物を蔵置することや、指定業者が独占的に使用することは認められません。また、この地域内で、複雑な加工や製造をして貨物の性質を変えるようなことも認められていません。
指定保税地域は、税関手続のために、貨物を置く場所として設けられたものであるため、コンテナヤードが殆どですが、沖縄の経済特区など特別に認められる場合もあります。
(2) 保税蔵置場(関税法第42条)
保税蔵置場は保税地域の中でも一番数が多く、外国貨物を蔵置できる空港の上屋や倉庫として、税関長が許可した場所をいいます。保税蔵置場には、外国貨物を積卸し、又は蔵置(原則2年、延長可能)することができます。その間は関税などの税金はかかりませんが、空港の上屋などは保管料が発生します。
保税蔵置場は、通関手続きの円滑化と中継貿易の発展を図るために設けられたものです。また免税店(保税売店)やその保管倉庫も保税蔵置場の許可が必要です。
(3) 保税工場(関税法第56条)
外国貨物の状態で加工、製造できる場所として税関長が許可した場所をいいます。保税工場は、加工貿易の振興のために設けられたもので、その加工又は製造の期間は原則として2年ですが、作業の都合によっては、更に期間を延長することも認められます。この期間中は、関税などがかからないので、原料を外国貨物のまま加工・精製・製造などを行い、製品(半製品)を外国に送り出せばよいわけです。
保税工場は、外国産原料の輸入や製品の輸出に便利な場所に設置されるのが普通ですが、国内販売品と一緒に輸出品の加工や製造を行う場合もあり、この場合には国内販売のための工場の立地条件に左右され、港から離れた内陸にある場合もあります。
保税工場で加工、製造している主な製品としては、粗糖、魚介類の缶詰、菓子、鋼材、電線、船舶、自動車、精密機械、土木機械、工作機械、石油製品、繊維、農薬、化学製品などがあります。
(4) 保税展示場(関税法第62条の2)
外国貨物を展示する会場として、税関長が許可した場所を保税展示場といいます。保税展示場は、国際的な規模で行われる博覧会や公的機関が行う外国商品の展示会などの運営を円滑にするために、外国貨物を関税などを課さないままで、簡易な手続により一定期間展示する場所として設けられたものです。東京モーターショーを初めとして国際博覧会や展示会、博物館などがあります。
(5) 総合保税地域(関税法62条の8)
前記(2)から(4)に掲げる保税地域が有する外国貨物の蔵置、加工、製造、展示などの各種機能を総合的に活用できる地域として、税関長が許可した場所をいいます。
総合保税地域は、輸入の促進や対内投資事業の円滑化などの動きを背景として、各種の輸入インフラの集積のメリットを助長するため、そのような施設が集積する地域に対応する保税制度として創設されたものです。
総合保税地域では、地域内において様々な機能を有する各種施設を弾力的に配置することができ、地域内の各施設の間では、手続を必要とせずに外国貨物の移動ができるなど、手続の簡素化が図られることになります。
総合保税地域の許可条件は厳しく公共性も求められるため、横浜大黒ふ頭や中部セントレア空港など令和4年4月1日現在全国に4か所しかありません。
いずれの保税地域も組織や貨物管理体制、設備管理やセキュリティ対策など経営基盤と自主管理体制が確立され、総合責任者以下保税管理に関する教育も必要となります。一度許可されれば維持できるものではなく、保税検査が定期的に行われ、管理体制が杜撰だったり非違行為があれば許可を取り消されたり搬入停止になったりします。また許可期限も設けられ、更新手続きも必要になります。ロジスティーダジャパンのスタッフは保税蔵置場での勤務経験もあり、申請にあたってのアドバイスやコンサルティングも承っております。
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