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  • hiroyuki kira

沖縄の災害ロジスティクスを考える

今月3日の台湾付近を震源とする大地震で課題として浮かび上がったのは、津波から避難する人々の車による交通渋滞だった。自分は当日の潮位や潮周りを見て津波は来ても大きくないと危ない判断を下し、通常通り豊見城城址にある職場に向かったが、驚いたのは多くの人々がその高台に避難していた事だった。沖縄の南部は沿岸部に住宅が多いので、それらに住まいを持つ人々は常日頃から危機意識を持っていたのだろう。しかし問題はその避難方法である。車社会の沖縄の人々が一斉に車で避難すれば、簡単に渋滞が発生することは想像に難くない。もし東日本大震災の三陸沿岸と同レベルの津波が来襲していれば、数万人の命が失われただろう。

 

今回沖縄の気象庁や県から特に避難方法に明確な指示が下されなかったことも、今後の大きな課題として残ったはずである。車を使わなければ徒歩で避難するわけだが、老齢者や足が不自由な人たちはどのように避難すればいいのだろう。無理をせず自宅の2階や付近のアパートやマンションに避難する方法もあるだろうし、高齢者や身障者に限定して車での避難を推奨することも必要だったかも知れない。どの程度の津波が襲ってくるのか予測は難しいだけに、県は地域ごとに明確な避難方法に関するガイダンスを急いで作らねばならないだろう。

 

ここで今回考えねばならないのが、「想定外」の津波が襲ってきた場合だ。例によって行政は「想定外だった」で全ての責任から逃れるつもりかもしれないが、最悪の事態を想定しておく責任から逃れることは出来ない。もし沖縄に十数メートルの津波が襲ってきたらどうなるだろう。数万人の犠牲者が出るだろう。しかしここで問題にしたいのは、生き残った人々が「生き延びていく」手段だ。折角大津波から避難できても、その後生き延びられなければ意味はない。もっとも重要なのは救援物資の「備蓄」である。能登のような陸続きの半島であってもライフラインやインフラが破壊されれば、津波のあとも犠牲者は増える。沖縄であればどうなのだろう。まず、沿岸部にある空港や港湾施設は使い物にならなくなるだろう。阪神淡路大震災では神戸港のガントリークレーンも横倒しになったことを考えれば、コンテナでの荷揚げも不可能になる。資材が到着する場所がなければ、復旧のしようがない。要は外部からの応援はヘリに限られるのだ。食料や資材の運搬にヘリでは気の遠くなるような時間がかかるだろう。そこで重要なのが常日頃からの「備蓄」であるが、その備蓄場所となる「倉庫」は沖縄の場合、ほぼ沿岸部に集中している。最初に壊滅的なダメージを追うのが交通や物流の拠点なのである。最近県内に巨大な物流センターが増えているが、あろうことかそれらは普段でも波しぶきを被るくらいの沿岸や低地にあるのだ。これらは津波が来れば真っ先に破壊されて保管物も流されてしまうだろう。では県民の食料や水、医療機器や復旧するためのフォークリフトや通信装置はどこに保管すべきなのか。まず考えられる場所が「配水池」だろう。那覇水道局の管轄だけでも下記のように7カ所(8池)、どれも高台にある。

 

赤嶺配水池

上識名配水池

豊見城配水池

新川配水池

真地配水池

安里配水池

泊配水池

 

当然ながら配水池は高台にあり普段は立ち入れない場所も多い。ここに地下室や多層構造にした倉庫を設け、悪路でも走行可能な装甲車両やドローンなどを保管しておく。捜索用のゴムボートやショベルカーなども相当数欲しい。配水池は緊急時の水源にもなることが想定されているので水は豊富だ。簡単なろ過装置と空のポリタンク、念のためにペットボトル数10万本、食料、燃料、簡易トイレ、医療機器、基本的な薬品、バッテリーなどを備蓄しておく。

 

幸か不幸か沖縄には自衛隊や米軍基地が多数あるため、救助隊は直ぐに編成されるだろう。しかしそれら基地の多くは沿岸部にあるため、ダメージを受けているかも知れない。とすれば、本土からの救援隊や復旧作業隊が実働出来るまでの期間、仮設住宅も必要になるが東北や能登のように沖縄は雨風さえ凌げれば冬でも凍死する可能性は小さいため、テントでもいいかも知れない。高齢者には学校の体育館などを開放すれば、数週間は持ちこたえられるだろう。しかし能登の復旧作業を見ていると、数週間で滑走路や港湾施設が復旧するとは思えない。備蓄物資は県人口の2か月分ほどを見積もっておかなければならないだろう。

 

一括交付金で箱モノを作っている場合ではない。備蓄物資は一度蓄えればいいわけではない。定期的な交換やメンテナンスも必要になる。

 

 

那覇市を例にとっても見れば、経済・観光振興、教育・福祉施設、まちづくり、公的建造物建設などに重きが置かれ、災害備蓄に大きな資金は費やされていない。

 

災害はいつ来るか分からない。しかし待ってくれない。災害に強い道路建設、公的建造物の避難所計画、災害備蓄の充実、運搬車・工事車両の保管、ドローンの保管と操縦士の養成、シェルターの増築、救助ボートの保管など数え上げればキリがない。行政には明日からでも取り組んで欲しい。

 

もちろん個人でも最低限の備蓄は必須である。明日大津波が来ない保証はないのだ。

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